ギターポップ学科 第七回講義
講師 ノーマン・ブレイキ
ギターポップのファンならスコットランドのグラスゴーという町に特別な思い入れのある人が多いでしょう。なぜにグラスゴーは僕らをひきつけるバンドを生み続けるんだろうか〜。ネオアコ世代から、アノラック世代、そして今もベル・アンド・セバスチャンやモグワイ、アラブ・ストラップ等々、音楽の趣向は様々だけど、素晴らしいバンドが次々と生まれ続けてます。そんな健全な音楽シーンのあるグラスゴーに僕らは遠く憧れをはせているんですが、まあ憧ればかりじゃなく、何かを学び取って今後の参考にと思いまして、1部のバンドにはなりますが紹介していきたいと思います。今回はアノラック中心です。そうそう今回グラスゴーを取り上げるってことで、急遽病院を抜け出してきた僕ノーマンが講師を久しぶりに務めるよ!うふふ。
THE PASTELS/ILLUMINATION
今回のメンツからすれば、まずは兄貴的存在のスティーブンが引きいるパステルズ!このアルバムは今のところ最新かな。初期の頃は親しみやすい、いわゆるヘタウマっていうのが良さだったりしたけど、このアルバムはすごく完成度高し。音楽的にすごく前向きで、僕はこのアルバム好きです。初期の良さが薄れていくのじゃなくて、新しい良さが出てきて進歩しているっていうのは、バンドとしてすごいことで、素敵なことだよね。スティーブンの音楽に対する姿勢、熱意がバンド内で共有できてるんだね。そして、そんなバンドの姿勢は今もグラスゴーのバンドたちに影響を与え続けてたりして。尊敬です。
BMWX BANDITS/THE 53rd & 3rd YEARS
上のパステルズで言ってることと比べるとかわいそうだけど、正直、BMXは初期の衝撃が大きかったです。このアルバムじゃないんだけど、初めて聴いたのが、Vinyl Japanから出たC-86 Plusでした。その中の”Disco Girl”のメロディーは頭にこびりついて離れませんでした。あまりに甘くて、楽しそうで、手作りな感じがして、何か始まるんじゃないかっていうドキドキ感があって。パンクを初めて聴いて時に思ったみたいに、このバンドを聴いてポップソングもできるんじゃないかって思いました。最近アルバム出てないけど、またみんなで楽しくやってほしいですね。
VASELINES/THE WAY OF THE VASELINES
ニルヴァーナがカバーしたことで、異常な注目のされ方をしてたヴァセリンズです。そんな状況から、このヴァセリンズの全曲を収めるコンプリート盤はSub Popから出てます。ジャケットに写ってる男女2人、ユージン・ケリーとフランシス・マッキーによるこのバンドは、パステルズのスティーブンの勧めで始めたようで、2人のキャラクター重視のバンドだったんでしょう。音楽好きだけど、バンド知識はなかった2人が奏でる音楽は、演奏の簡単なシンプルな曲に、ポップなメロディーで、2人の高い声、低い声がいい感じで掛け合ってて、アメリカのビート・ハプニングのような雰囲気があります。バンド始めた初期衝動が偶然的にうまく表現された、その時の音が詰まってます。
SUPER STAR/PALM TREE
グラスゴーでは音楽知識の深さ、多彩な楽器の演奏能力から、いろんなバンドから引っ張りだこだった、ジョー・マカリンデンが中心のバンドです。このジョーっていう人はなかなか恵まれなくて、アメリカに渡ったらうまくいかず、メンバーにも逃げられて、一から出直してこの作品を作ったそうです。そんなわけでこの作品は、なんか切実とした迫力があります。かなりの力作でなんでしょうが、初期のミニアルバムみたいな作品を作ってくれたらなと思ってしまうところもありますね。ジョーのミュージシャンシップにメンバーが付いていけないっていうのもあるのかな〜、この人はソロでもいいと思うけどね。完璧主義みたいな感じがするけど、ソロでもどんどん作品を出していってほしいです。
TEENAGE FANCLUB/THIRTEEN
セカンドの”Bandwagonespue”が発表された時に、「ダイナソーJrへのイギリスからの回答」なんていわれてましたね。当時は、そうかな〜?全然激しくないな〜って思ってたんだけど、ちょっとフォーク・ロック寄りになったこのサードを聴いて間違いに気づきました。よりメロディーが前面に出て、本来のこのバンドの良さが分かりやすくなって、完璧に虜になりました。変なイメージなしに改めて聴くと、セカンドもすごく良くて、僕の耳は節穴だったのかな〜って思います。(がっくり肩を落とす)この後も着実にマイペースで作品を出してますが、どの作品も大好きです。3人の優秀なソングライターが1つのバンドでうまくやれるってのは奇跡的ですね。このバンドの姿勢、メンバーの人柄なら、これからも誠実な音楽を作り続けてくれると思います。
EUGENIUS/OOMALAMA
上で紹介してるヴァセリンズのユージン・ケリーが次に始めたバンドです。元ヴァセリンズのイメージを持たれて、やりにくかったでしょうね。派手さや、個性は薄れたかもしれないけど、素朴で、実直な感じがして結構好きでした。全体的にフォークロック調で、サイケっぽい感じもしたりして、じわじわ良くなってきます。もう解散してしまったのかな?この後のセカンドが出てからは、作品は出てないと思います。ユージンはなんかベル・アンド・セバスチャンのローディーをやってたりして、グラスゴーのシーンに関わってはいるみたいだけど、もうバンドしないのかな〜。
URUSEI YATSURA/WE ARE URUSEI YATSURA
日本の漫画のタイトルをそのまんまバンド名にしたふざけたバンド。このアルバム後、クレームがきて”YATSURA”に改名、そんなお茶目なバンドですが、音はなかなかかっこいい。紹介してきたアノラックっていわれるバンドが一段落して、狭間の時期にがんばってましたね。シーンが違ったのかもしれないけど、グラスゴーというより、アメリカバンドの影響が強い音です。一番例えやすいのは、ペイブメント。ちょっとハードした感じで、変な曲もありますが、テンポの速い曲はバッチリです。このバンドも解散したみたいですね。今健在だったらSEAFOODなんかと近い感じになったんじゃないかなって思いますが、どうなんでしょう?
ASTRID/PLAY DEAD
このバンドはバリバリ現役です、今が旬なんじゃないでしょうか。ギターポップファンは大概抑えてるんでしょうね。ティーンネイジがよく引き合いに出されますが、初期の頃と比べると今作は影響は感じさせないですね。どちらかというとネオアコっぽいかな、前作はエドウィン・コリンズがプロドュースだったし。まさにギターポップっていう感じの音で、よりメロウに、洗練されてきてます。バンドとしての完成度が高くなってきて、個性が出てきたんじゃないでしょうか。。アメリカのインディーポップシーンと同時進行してるようなバンドで、今のイギリスでは貴重でしょう。
SPEEDBOAT/SATELLITE GIRL
次に紹介するNICE MANことフランシスとその弟が参加してるバンドです。フランシスがやってるSHOESHINE RECORDSから出されたこの作品、何気にいいです!隠れた名盤でしょう。活動はあまり活発じゃないようで、あまり情報は聞かないんですが、この作品以後アルバムは出てないですね。SHOESHINでリリースされてる他のアーティスト比べると、あまりに稚拙で完成されてないけど、ファースト特有の初初しいエネルギーと、シンプルでラフな演奏に乗っかった素朴な歌メロがすばらしい!非常に次が楽しみです。いい意味で、ティーンエイジとBMXを合わせた感じかな〜。
NICE MAN/SAUCHIEHALL & HOPE(A POP OPERA)
グラスゴーのドラムマン、フランシス・マクドナルドのソロですね。ここで紹介してるバンドの大部分へ参加してるんですよね、パステルズ、ティーンネイジ、BMX、ユージニアスでドラムを叩いてたなんて、僕らにとってはみんな憧れのバンドなのに、うらやましい!そしてこんな素晴らしい作品を作る才能があるなんて。この人のカントリー好きから、ソロはカントリー色強いかなって思ったけど、思わず顔が緩んでしまうほのぼのポップソング!ベル・アンド・セバスチャンのファーストのジャケットに写ってた女性はこのフランシスの彼女なんだって、またうらやまし!ぐすっ〜。
BELLE AND SEBASTIAN/TIGERMILK
今をときめくこのバンド、すでにグラスゴーの顔でしょう。このバンドが出てきたとき、どこでも評価高かったですね〜。パステルズのスティーブンがべた褒めしてるなどの前情報で、かなり期待してファーストを聴いけど、なるほど玄人好みの音ですねっていうことで済ましてました。音はクラッシックな感じだけど、当時インディーズのシーンから出てきたことがショッキングだったでしょう。親しみやすいラフなギターバンドが主流な中で、あまりに音楽的で、繊細で、ストイックな姿勢は、すぐにカリスマ性を帯びましたね。また新たなグラスゴーへの憧れが生まれた気がします。音楽に真摯に向かう健全なシーンがこんなバンドを生むんだろうね。うんうん。
みんなも大好きなバンドばかりで、いまさら説明なんかいらない!っていう方もいるかもしれませんが、まあ何事も基礎が大事ということで、また久々に聴きなおしてみてはいかがでしょうか。何か発見があるかもしれませんよ、昔の切なかったことを思い出しちゃったり・・・。そんなことで、僕は病院に戻ります・・。さ〜よ〜な〜ら〜。
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