ギターポップ学科 第五回講義



講師 イアン・マッキンリー


なんか、学長が「ギターポップ学科もお前やれ」ってね。本当にポストハードコア学科でも手がいっぱいなのに。学長もね、マシュー・スウィートポテトだっけ?あんな青二才を講師にするもんだからね。なんか、今朝電話がかかってきて、夜鳴きが収まらないから休ましてくれって。それも母親からですよ。バカじゃないの・・・。そんな訳で今回は、たぶん登校拒否してたような、いわゆるユルイ人たち、社会生活苦手そう〜!っていうだめな人たちを紹介していきます。まあ、ノーマン・ブレイキとかあんな感じだな。僕はこうはなりたくないけどね。音楽のジャンルはバラバラだし、会ったわけではないので本当のところは知りませんが、僕が心配になってしまうような、頼りなく、ロマンチックで愛すべき人たちを紹介していきます。ったく!どいつもこいつもしっかりせい!!でも、好きなんだよな・・・。
JONATHAN RICHMAN & THE MODERN LOVERS/Jonathan Sings!

なさけない雰囲気を醸し出している人といえば、この人を思い出します。めちゃくちゃなさけないんだけど、多くのアーティストから愛されて、尊敬されてるね。スローンやBMXバンディットなどギターポップ系のバンドがカバーしてる。もう50歳くらいで大御所なのに、全然そんな感じが似合わない。何年か前、名古屋のクワトロでライブを見た時、ギター一本でステージにふら〜っと出てきて歌ってました、しまいには、ステージを降りて客のテーブルを回りながら歌っていて、「こっ、この人やばい!」って思った思い出があります。アンチヒーローのスタンスは皆この人から学んだのでしょうね。
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DANIEL JOHNSTON/Fun

この人の声は切ないな〜。こんなに切ない声を出すのなら、この人の心の中はどんな脆いんだろう。見た目は単なるおっさんなんだけど、子供が泣きべそかきながら感情を露わにしているような感じ。「I love you so much」っていう言葉をこんなに切なく、あったかく歌えるなんて。この人の描くジャケットとかの絵もかなりアッパー系で、根本敬の絵に近いものがある。根本の絵は意図的に登場人物をどうしようもない人間にして世界を描くけど、この人は自分から自然に出てくるもののままなので、あまりに危うすぎます。
VIOLENT FEMMES/Violent Femmes

ヴォーカルのゴードンの声を聞くと、ひねくれ者で、物を斜めに見る人だろうな〜って感じるね。そういう人って親近感沸くんだ。この人は父親が牧師だったというのをインタビューで読んだ記憶があります。何にかに反発して、何もかもが矛盾を感じてしまう。そんな不器用な人が歌う歌は、何かもどかしさを訴えていて、切なかったり、共感したり。新しいアルバムを、ラジオでも紹介したけど、このアルバムから15年以上過ぎても相変わらずの様子で、何かほっとさせてくれます。学長!いい加減、給料払ってもっとホッとさせてくれよ!
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RICHARD HELL & THE VOIDOIDS/Blank Generation

この人はかっこいい!他の人とはちょっと違ってかっこいい部類の人だね。いわゆるロックンローラーで不良的なダメな人はいっぱいいると思うだけど、この人を取り上げたのは、どっか頼りなく、脆い感じがして、ロマンティックな雰囲気が強いからです。歌もタイトじゃなくて、ヨレルというか、ユレル感じ。パンクの切ない部分、ロマンチシズムを表現した人なんじゃないですかね。パンク系だけじゃなくいろんなジャンルのファンから愛されるのはそんな魅力からじゃないでしょうか。
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WEEN/Chocolate And Cheeser

人を喰ったような飄々としたキャラクターが一般的なイメージで、そのイメージどおり音のほうも、初期のころはガラクタ宅録で、ノイジーあり、ハードコアあり、ジャズありのどっかふざけた感じ。でもそんな音の中に隠れてすごくいい曲があったりするんだな。すごく恥ずかしがり屋で、素直に言いたいのに、冗談ばっかり言っちゃうみたいなもんじゃないかな。最近は不思議な雰囲気を出しつつもっとストレートに表現するようになって、曲の良さがわかりやすくなった。でも、素直になれず、人を喰った、ユーモアのあるキャラクターは相変わらずです。
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NEIL MICHAEL HAGERTY/Neil Michael Hagerty

ロイヤルトラックスのニール・ハガティがソロを出しちゃいましたね。飛行機が嫌いでロイヤルトラックスの来日講演の時この人だけ来なかったっていうダメぶりを発揮しているニールですが、ジェニファーがバンド活動を休止することになったため、一人でこの作品を作り上げたそうです。このジャケの写真もやばいけど音もやばいですね、一人にさせとくとどんどん深みにはまっていってます。本当に脆い人だと思います。このアルバムは何か怖いです。やっぱりジェニファーがそばにいてあげないと。そしてまた、ロイヤルトラックスで美しいバラードを聞かせてほしいですね。
SMOG/Dongs Of Sevotion

初めて、この人の作品を聞いたのは「Julius Caesar」だった。肌寒い、薄暗い、がらんどうの部屋に閉じ込められて、よく表情の見えない男から、物語を聞かされるような感覚におちいりました。なんなんだこれ、と思って今まで聞いてきたけど、あまりよく分からないです。ただがらんどうの部屋で寝ているのって結構落ち着くんだよね。冷めた感情の人だからこんな歌を歌うのではなく、大げさな希望や期待のない日常を敏感に感じ取ることができる人だから、こんな歌が歌えるんです。
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PEDRO THE LION/It's Hard to Find a Friend

声って人の性格が出ますよね。この人、会話するときは言葉を選んで真面目に話しそう、人間関係に臆病で、繊細な人なんだろうな。自分自身に問い掛けるように歌う声は、聞いてる方にも語りかけてきますね。ポップな曲とかもあるんだけど、基本的に演奏はシンプルで、内向的な完結しているって感じがします。アルバムタイトルも僕たちに問い掛けてきますね。あなたには音楽をつくるのが必要で、そして僕たちもその音楽で癒されるんです。
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POOH STICKS/Optimistic Fool

ペイブメントも初期はなめた態度で、ふざけた感じのキャラクターだったけど、この人もそんなキャラクターですね。ペイブメントは知的な人たちが、若気の至りで意図的に演じてる感じがしたけど、たぶんこの人はもっと天然でしょう。自分では自覚してないのに周りの人たちに迷惑かけてる、どっかずれた人。音楽はめちゃポップでロマンチックで、なんか飄々としている。Weenと似た雰囲気があるけど、もうちょうっとずうずうしいって感じ。でも、つい気になってしまう。最近はアルバム出してないみたいだけど、どうせマイペースに生活してるんだろうな。僕もそうしたいよ!ねぇ!学長!!
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まあ、僕の勝手なイメージで紹介しているので、失礼に感じられるところもあると思いますが、愛情の裏返しなんで許してくださいな。皆さんの周りにも色んなタイプのダメな人がいると思います。ノーマン・ブレイキ、マシュー・スウィートポテト。これからは、ちょっと怒るのを我慢して、遠くから温かく見守ってあげてください。(自分に言い聞かせるようにうなずく)そして、自分をだめな人間だ〜、って悩んでる人たちは、この人たちの歌で癒されてください。今回は音楽的な講義は全然してないね。あまり役に立たないとは思いますが、登校拒否の友達にたまには顔を出すように言ってあげてください。それじゃ、また。


次回の講義  フォーキーやらカントリーやらのギターポップ